ISLAM   〜ムスリムとして知っておくべきこと〜

『イスラームに関する質問 』

ムハンマド・ジャワド・シューリ


注:ウィルソン・H・グウェルティン(W)
     イマーム・シューリ(C)

  【質問12: 預言者ムハンマド】


W: 預言者の歴史によると、ムハンマドは40歳のとき、ヒラの洞窟で祈っていたときに神の光を授かり、真実の声を聞きました。そのとき、人類のための神の使徒に命じられました。ヒラの洞窟ではどんな宣告があったのでしょうか?


C: ヒラの洞窟で新しい預言者に下されたのは、真の神についての真の概念に関する事実でした。すなわち創造の偉力、人間を泥から創造した偉力、物事を開示し世界に
認識させる偉力。人間の知識と書く能力が、認識力を明白に示しています。
世界文明の基盤にあるのは、この知識と書く能力です。
聖クルアーンはこう語っています。

読め,「創造なされる御方,あなたの主の御名において。一凝血から,人間を創られた。」 読め,「あなたの主は,最高の尊貴であられ,筆によって(書くことを)教えられた
御方。人間に未知なることを教えられた御方である。」(96:1−5)


W: ムハンマドは預言者たちの中でどのように位置付けられているのでしょうか?


C: 歴史に残る主な預言者たちとは明らかに区別されています。

1. 預言者ムハンマドは世界史並びに宗教史両者の骨子である。
     彼の宣教は世界史を変える重大な要因だった。世界の出来事における
     ムハンマドの役割と存在を疑う歴史家はいない。

2. 預言者ムハンマドは存命中、国家が教えを受け入れ、宗教の成長を自分の目で
     確かめることのできた唯一の預言者であった。

3. ヘブライ人やアラブ人といった特定の民族に遣わされたのではなく、全世界の
     普遍の預言者として遣わされた。聖クルアーンにはこうある。

     言ってやるがいい。「人びとよ,わたしはアッラーの使徒として,あなたがた凡てに
     遺わされた者である。天と地の大権は,かれのものである・・・・・・」(7:158)

4. 預言者ムハンマドが伝えた教えは、あらゆる人種差別に反対するものだった。
     すべての社会的弊害を取り除くことが彼の宣教の根幹だった。
     黒人、白人、あらゆる人種は皆平等であり、人種・民族間に優劣はない。
     人間は各人の行為のみに対し責任を負う。
     人間は自分の属する民族・人種を選ぶことはできない。
     人間の優劣を決めるのは善行のみである。
     聖クルアーンはこう語る。

     「アッラーの御許で最も貴い者は,あなたがたの中最も主を畏れる者である。」
     (49:13)

5. 存命中、高貴な理念に基づく国家を築き上げた。
     イスラーム国家が誕生したのは、人民には選ぶ権利がなく、政府は人民を
     威圧する支配組織と考えられていた時代であった。民衆自身が支配者との
     平等や人々の間の平等を信じていなかった時代だった。
     イスラームの教えはこれとは全く反対だった。
     イスラームにおける政府は、一つの導きを信じる人びとの信仰の果実だった。
     そうした信条の推進を目指し自発的協力により生まれたのがイスラーム政府で
     あった。このような信条の普及により人間同士のつながりが生まれ、
     これを一つの兄弟愛とみなした。

6. 預言者ムハンマドはすべての対立を打ち負かした。
     彼を倒すことができた一団はなかった。

7. 預言者ムハンマドは人びとの自由を奪おうと思えばそうできるくらいの影響力を
     持っていたときに、宗教の自由を宣言した預言者だった。
     ムハンマドとその従者は13年間迫害されていた。
     その間、宗教の自由を口にしなかったが、対抗者が倒れ不利になった時点で
     こう宣言した。

     「宗教には強制があってはならない。正に正しい道は迷誤から明らかに(分別)
     されている。」(2:256)

8. 最後の預言者であることを宣告した唯一の預言者だった。
     神に遣わされた預言者の長い歴史はムハンマドの死で完了した。
     ムハンマドの後、自分が預言者だと主張する者は大勢出現しているが、
     一人として立証できた者はいない。
     ムハンマドの死から何世紀も経過したが、歴史上、彼は今も最後の預言者で
     在り続けている。

9. ムハンマドは人間が手を加えていない書を世界に紹介した唯一の預言者だった。
     クルアーンは他の聖典のような神と人間のやりとりではなく、神がムハンマドの
     口を介して人類に伝えた神の言葉そのものである。


W: モーゼやイエスなどムハンマド以前の預言者は驚くべき超自然の力を授かって
いたのに、ムハンマドはそういったものを見せていません。
厳密にいうと、奇跡的行為に頼りませんでした。これは不可解なことです。
ムハンマドは自分が預言者であることの証拠をクルアーンだけに頼りました。
預言者ムハンマドがイエスやモーゼのように奇跡を起こさなかったのはなぜですか?



C: ムハンマドの奇跡と以前の預言者の奇跡には違いがあります。
これには二つの理由がありました。

1. イエスとモーゼの奇跡が驚異的なのは事実だが、それほどの奇跡があっても
     彼らの時代の人びとを預言者とその教えに服従させることはできなかった。
     歴史によると、預言者モーゼは奇跡を見せた後もイスラエルの民を従わせることが
     できなかった。あの奇跡の海を自分の足で歩いたのに、モーゼの教えに忠実に
     服従せず、山で十戒を受けた後、戻ってみると彼らは神の道から逸脱していた。
     イエスには多くの従者がいたものの、危機がやって来ると弟子ですら彼を見捨てた。
     人びとはあのような奇跡を見ていたのに神の教えに服従せず、大多数は魔術師とか      詐欺師と呼んで信じなかった。
     ムハンマドの時代に同じような奇跡が繰返されていたとしても、以前より良い結果が      生まれたかといえばそうではなかっただろう。だから異なる種の奇跡が必要だった。

2. モーゼとイエスの奇跡は非常に効果的で、それを目撃した人びとは心から信じたと      仮定しよう。奇跡は永続せず一時的でしかなかったという事実が残る。
     一つの現象は永続せず、二度見ることができない。盲人が視覚をとり戻すとか、
     死者が生き返るという現象は驚異ではあるが、現象は生じるとすぐに消えてしまう
     もの。ある現象が終ってしまえばそれは過去の出来事となる。
     目撃しなかった人は、目撃者の証言に頼るしかない。

     後の預言者は、前の預言者がやってのけた奇跡に依拠することで、自分と同時期      の人びとを納得させることができる。前に現れた預言者は、自分の奇跡を目撃
     できない未来の世代を心配しなくても後に現れる預言者に頼ればよい。
     後の預言者は自分の奇跡によって前の預言者を保証できる。

     ところがムハンマドの場合は違っていた。
     現象は永続しないので未来世代はその現象を目撃できない。
     ムハンマドは最後の預言者であるから自分の奇跡に頼るわけにはいかなかった。
     彼の後、預言者はもう出現しないのだから頼れるものがない。
     ムハンマドにも奇跡は必要だったが、それまでの預言者とは異なる種の奇跡が
     必要だった。ムハンマドの同時代の人びとだけでなく、未来世代にも証言できる
     ような継続した奇跡でなければならない。

     カメラや映像のない時代、時代を超えて目撃可能な一つの現象が必要だとすれば、
     永続可能の奇跡には言葉という形態しかない。
     卓越した言葉が書物に記録されれば、どの時代の人にも目撃者として証言できる。
     それが類無い言葉であれば、永遠にそう在り続けるし、どの世代の人にも奇跡の
     言葉を判断することが可能となる。
     封印の預言者に適した奇跡とはこの種のものでした。
     こうのような理由から聖クルアーンが預言者ムハンマドの真実性の証拠となって
     いるのです。



blue-a5.gif(1025 byte) 質問13: 預言者性のさらなる証拠――クルアーンの未来に関する予言       



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