ISLAM   〜ムスリムとして知っておくべきこと〜

『イスラームに関する質問 』

ムハンマド・ジャワド・シューリ


注:ウィルソン・H・グウェルティン(W)
     イマーム・シューリ(C)

  【質問11: なぜ預言者が必要なのか】


W: 人類にはなぜ預言者・神の使徒が必要なのでしょうか?
 人には正悪の区別ができる精神的能力が具わっています。
良いこと悪いことを教える天の導きなど必要ないと言うこともできます。
一般の人は分別ある行動がとれますから、神の法がなくてもきちんと他者や
家族と関わることはできます。



C:預言者が必要なのは次の理由からです。

1. 神の民に気付かせる必要

理論的にいえば、人間は神の被造物を地上で観察する能力によって、
創造主の存在を認めることができる。
人間の自由なる精神は、抽象的事柄や普遍的思考が理解できる。
人間には生物学的欲求があるために、物質界と密接なつながりをもつ。
この物質的欲望のせいで、人間の最良のものが他所に逸れてしまうのである。
一般人には自分が何者かに創造されたという客観的理解力が欠けているようだ。
神について建設的に考えるために自分を現世の物質から切り離すことができない。

宇宙の秩序という不思議が、宇宙の秩序をつかさどる神、すなわち全能主の存在を
示唆しているが、人間はつまらぬことに没頭しすぎて自然の法則に気付かない。
その法則の起源を考えてみることは尚のことできない。
「太陽は東から昇る」ということに慣れすぎていて、なぜそうなのかを考えることが
できなくなっている。創造主の重大認識が人類には十分にできていない。
創造主の存在を知るという普遍的認識は、単なる思考の結果ではなく、
数人の優れた人たちが人類に教えてきたからである。

2. 論争余地のない権威の必要

教育、能力、感情、背景が異なるために人には見解の相違が生じる。
人間の行為に関する重要な問題においては、個人や集団間には大いに議論の
余地がある。倫理問題に関しては激しい論争が繰広げられている。
哲学上、どのような見解であろうと正当化されており、問題を明確にさせて論理的に
選択せず、合理的な哲学によって混乱は増幅している。
論理・哲学は倫理上の問題解決に失敗した。
我々が求める解答は、個人や集団が服従可能な論争余地のない絶対的権威から
得るものでなければならない。その権威が神なのである。

3. 神を礼拝する必要

発想豊かな人が神とその偉大さを認識できても、普通、礼拝の重要性は見過ごして
いる。また、礼拝の必要性を認識していても、礼拝のやり方を知らない。
動物を丸焼きにして生け贄を捧げるのが大切だと考える人もいれば、神の御名に
おいて動物に熱中する人たちもいる。
神は禁欲を愛すと信じる人もいれば、現世は神が嫌うものであって人類に破壊を
招くものだと信じる人もいる。
楽器の演奏や歌で神を崇拝する人たちがいれば、跪いて神に献身する人たちもいる。
神への献身の形は、神の御意思に沿ったものでなければならない。
我々の欲求欲望を満たすものであってはならない。
従って、その方法は神の使徒すなわち預言者を通して明確にされていなければ
ならない。

4. 衝動を抑制する必要

導きを受けていない、訓練されていない人間は、動物に似て本能に走る。
分別や知性は、抑制がなければ情熱を満たせるだけのものに堕落する。
哲学はすべての人が理解できるものではなく、欲望の抑制には役立たない。
欲望をコントロールさせる一貫したものが哲学にはない。
本能に従うことだけに努めるべきだと結論付ける人たちがおり、今日の私たちは
そういった超実利主義思想と苦闘している。
そのような思想が道徳的目標のために欲望を制御しようとするのを妨害している。
究極の道徳基準はすべて神にある。こうした主義や思想の論争を終らせるために、
神の使徒が運んできた神の御言葉は健全な基盤となる。

5. 来世に関する情報の必要

神を信ずる者は、ほぼ確実に、死後も自分は何らかのかたちで続くと考え、益を
受けるか処罰を受けるかの審判の日が来ることを見込んでいる。
そういった来世があるのだとすれば、人間は審判に備えておかねばならない。
来世の存在を知るのは神のみである。哲学はここでは何も役に立たない。
また、人間の心は現世の体験または観察で来世の存在を推測できない。
確実な知識は神のみにあり、この情報を人類に知らせ警告するために使徒を遣わせる。

これまでの疑問に対する解答はすべて神にある。
神はその望むままに人間に知識を授けることができる。
その一つの方法として預言者が遣わされる。
預言者は人間と神の仲介役として、疑問の一つひとつを明確に答える。
このような神の教えには次の目的があった。

(A)宇宙の偉大な秩序の真理に気付かせる。
     一般の人は宇宙の秩序にすっかり慣れ親しんでいるために重要視しなくなって
     いる。宇宙の不思議や無限を注意深く熟考してみれば、これを創造した主への
     強固で健全な信仰が生まれよう。預言者の教えと導きを通して、人はそういった
     自然の印に注目するようになる。

(B)道徳の基準を示し、倫理上の論争に終止符を打たせて人類を従わせる。

(C)神を信仰する義務を明らかにさせ、礼拝のやり方を教える。

(D)欲望の抑制、気高さや純潔さの促進に必要な規則を教える。
     この気高さや純潔さを漸進的に高めることができたなら、天使と同等に
     高められたかもしれない。

(E)死後の世界の有無を確実に知らせる。
     現世と異なる世界の存在の有無を知るのは、それを創造した主のみであり、
     この情報源は主のみである。


W: しかし、私達は今も倫理上の論争を続けており、神の教えでそういった目的が
達成されたかといえばそうではありません。創造主を信仰する方法、神の存在、
死後の世界については相変わらず異論があります。



C: 目的は十分達成されています。
人類の大多数は倫理上の問題のほとんどに同意しており、創造主と来世を信じて
います。人類が欲望を抑え、世界を比較的道徳に適った場にできているのは、
これほど大勢の人びとが神の教えを受け入れているからなのです。

もっといえば、神の教えがこれらの目的のために役立っていなかったとしても、
神の教えは必要といえます。なぜなら創造主は私達が神を知り、動物と人間を
区別する道徳を奨励する機会をお与えになるはずだからです。
神が他の世界を創造したのであれば、そのことを人類にわからせるはずです。
神から知らされなかったら私達は絶対に知ることはできません。
この情報が使徒を介して伝えられていなかったなら、私達は無視しても赦される
だろうし、私達はある程度の完璧さに到達する機会もなかったでしょう。
他の世界が創造されているのに私達に知らされていなかったとしたら、そのような
創造は無駄になる。

神の教えは必要という仮説は歴史事実に一致しています。
人間は原始段階にあったので神の導きは人間をおざなりにしませんでした。
創造主は、改革と導きという高貴な務めを果たすために、大勢の優れた人間を
選ばれました。


W: 「預言者」とは文字通り、神と交信をして神の言葉を受け取る人だと理解して
います。人間のコミュニケーション法は身体的なもので、耳で聞こえる声や読むことの
できる文字が手段となっています。
預言者は私達と同じように耳で声を聞いたり目で文字を読んだりする人間です。
でも神は肉体的存在ではないので、声をだして話したり手を使って書いたりしません。
預言者はどうやって神と交信したのでしょうか?



C: 預言者は次の方法で神と交信しました。

(A)心で啓示を受けた。
     神はある真実を預言者の心に伝えて明確な知識を示した。

(B)神は声をもたないため、言葉を話さない物体から預言者に聞こえるような
     言葉を創造した。モーゼが啓示を受けたのはこの方法によるもので、彼は
     木から聞こえてくる神の言葉を聞いた。

(C)天使を通じて神の明白な教えを受け取った。
     預言者ムハンマドは天使ジブリール(ガブリエル)を通じて聖クルアーンの
     啓示を受けた。

クルアーンにはこうあります。

アッラーが,人間に(直接)語りかけられることはない。啓示によるか,帳の陰から,
または使徒(天使)を遣わし,かれが命令を下して,その御望みを明かす。
本当にかれは,至高にして英明であられる。(42:51)

預言者以外の人間にとっては、こういった方法は常識的ではなく不可能なことです。
創造主は御好みのままに神の僕と交信できますが、啓示を受ける側の人間は
他の人よりも精神面において優れた何か特殊な性質をもっていたはずです。


W: 歴史の証言にあるように、多くの人間が自分は預言者だと宣言しています。
こういう人たちはどの時代にもいます。現在生きている人の中にもいます。
本物の預言者もいれば偽者もいました。
真の預言者かどうかはどうすれば区別できますか?



C: 預言者は神の使徒です。人類に遣わされた神の大使なのです。
大使には本物の大使であることを承認した調印された信任状がなければなりません。
勝手に大使を名乗ることはできません。預言者と信じられている人たちには、他の人にない何らかの特異な力が具わっていました。

モーゼは杖を蛇に変えたり、水を血に変えたり、海水を分けたりする偉力を神から
授かりました。イエスは薬を使わないで病人を癒したり、盲人の目を見えるようにしたり、死人を蘇えらせたりする力を与えられました。聖クルアーンには、ゆりかごの中で話しをしたともあります。ムハンマドには優れた言葉、すなわち聖クルアーンが具わっており、人類にアラビア語の啓示と同じものが作れるものなら作ってみよと挑戦しています。


W: 神は非人間を使徒に遣わせたのでしょうか? 預言者は人間だったのですか?


C: 預言者は人類の模範なので、人間と同じ性質、能力、限界をもっていなければ
なりません。人が惹きつけられる模範は、人が到達できる、従えるものでなくては
なりません。人間とは異なる性質の者が預言者だったとしたら、誰も従おうと
しないでしょう。従者にも到達できる完璧さでなければ困ります。
誰かが私に高貴な生き方を示してくれれば、私もそのレベルに達したいと試みます。
預言者は自分と同じ人間。預言者に可能なことは私にも可能なはず。
しかし、高貴な道徳観を示したのが天使だとすれば、私はその模範に従おうとはしない
でしょう。天使に可能なことは人間の私には可能ではないし、天使は人間と同じ性質を持たないのですから。

人類の授かった預言者は人間であるとする理由はもう一つあります。
預言者は通常ありえない方法で真実を伝えたという話しをしてきましたが、預言者の
行為が通常の人間の自然な能力を超越していることから、預言者は神からそういった
権限を与えらたと認識できます。
もしも預言者が非人間だったり天使だったりすればそうはいかない。

例えば、人間である預言者が何の助けも借りずに飛んだとすれば、預言者の真実性がこれで示されますが、天使が同じことをしてもだめです。なぜなら天使は人間と性質が
異なり、引力に影響されません。
天使が飛んでいてもそれは天使の能力を超越していないのだから。


W: イスラームの見解による預言者性とは?


C: イスラームの預言者性は以下の通りです。

1.ムハンマドを預言者と信じる。ムハンマドは特定の国に遣わされたのではなく、
     全人類に遣わされた偉大な預言者です。
     聖クルアーンにはこうあります。

     言ってやるがいい。「人びとよ,わたしはアッラーの使徒として,あなたがた凡てに
     遺わされた者である。天と地の大権は,かれのものである。かれの外に神はなく,
     かれは生を授け死を与える御方である。だからアッラーと御言葉を信幸する,
     文字を知らない使徒を信頼しかれに従え。そうすればきっとあなたがたは導かれる      であろう。」(7:158)

2.ムハンマド以前の預言者全員を信じる。聖クルアーンが認めているからです。

     言え,「わたしたちはアッラーを信じ,わたしたちに啓示されたものを信じます。
     またイブラーヒーム,イスマーイール,イスハーク,ヤアコーブと諸支部族に啓示
     されたもの,とムーサーとイーサーに与えられたもの,と主から預言者たちに
     下されたものを信じます。かれらの間のどちらにも,差別をつけません。
     かれにわたしたちは服従,帰依します。」(2:136)

3. ムハンマドは神に遣わされた最後の預言者、すなわち封印の預言者であることを
     信じる。

     「ムハンマドは,あなたがた男たちの誰の父親でもない。しかし,アッラーの使徒で      あり,また預言者たちの封緘である。本当にアッラーは全知であられる。」(33:40)

封緘(ハッタマ)には、入れ物の封印とか真正性を証明する文書の押印という意味が
あります。封印や押印は証明した内容の終わりに押されるものです。
預言者ムハンマドは従弟アリーに、
「私の後に預言者が現れないことを除けば、あなたは私にとって、ムーサー(モーゼ)にとってのハールーン(アロン)と同等の位置にある」と語っています。

blue-a5.gif(1025 byte) 質問12: 預言者ムハンマド       



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